【2022.05.20 追記】
こちらの記事の更新版を note. にアップしました。
よろしければ、こちら☝︎をチェックしていただけますと幸いです!
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今回のコラムのテーマは、「ベトナムの音楽」についてです。
一言に「ベトナムの音楽」といっても、
節のきいた伝統音楽や流行りのイケイケV-POPなど、いろいろあるのですが、
今回、取り上げたいのは、
オシャレなインディーズや、注目の若手歌手。
実験的な音楽やユニークな歌声など、
個性の光るバンドや歌手をピックアップしてみました。
現地のカフェで実際に流れている曲もあり、
メロディや歌声だけで十分魅力的なので、
ベトナム語が分からなくても、きっと大丈夫。
洋楽のような感覚で聴き流しながら、
ベトナムのカフェ気分を味わってみるのもいいかもしれません。
ぜひ、自分のお気に入りを見つけて、
ステイホームに潤いをプラスしてみては。
今回取り上げる 11組+α は、下記の通り。
長くなってしまうので【前編】【後編】に分けて、
今回は6組目までをご紹介します。
【前編】
・Thinh Suy
・Ngot
・Hai Sam
・Tien Tien
・Quyech
・Bung Mo
【後編】
・Marzuz
・Madomoiselle
・Tau Bay
・Le Cat Trong Ly
・Tung
(番外編)
HIEUTHUHAI ほか
補足
ここで取り上げている曲やアーティストは、
私が、これまで過ごしたベトナム生活の中で、いいなと思った曲やアーティストを主観まみれでセレクトしています。
たとえば
・カフェのBGMでかかっていて、Siriに「これって何の曲?」って聞いたり、
・スピーカー持参でカフェにきたベトナム人に話しかけて聞いたり、
・好きなバンドのライブで共演していたり
して知った人たち。なので偏った部分も大いにありますが、
「新たなベトナム音楽との出会い」が提供できたら幸いです。
「とりあえず、ひと通り聞いてみたい。」
という方のために、Youtubeに プレイリスト も作りました。
上のリンク、もしくはYoutubeで「ベトナムのニューポップ」と検索していただくと、記事に登場するアーティストの曲をランダムにチェックすることができます。
それでは、1組目から
01
■ Thinh Suy / ティンスイ
[プロフィール]
ビンディン省出身。現在22歳のシンガーソングライター。
ホーチミン市工科大学在学中の2019年に作った「Mot Dem Say」がヒットし、一躍インディーズ界の注目の的に。
制作活動に専念するため大学を中退し、その後もヒット曲をリリース。
現在もホーチミン市を拠点に活動中。
[魅力]
魅力は、飾らず等身大な音楽スタイルと、雰囲気のある歌声。
ベトナムはメロディアスで感傷的なバラードが多いのですが、Thinh Suyの曲は飾らず、感傷的過ぎず、どこまでも平和的で穏やか。繰り返し聞きたくなる、飽きのこない曲が多いです。
[オススメ曲]
「若葉の愛」を意味するタイトルで、青春の淡い恋を歌った一曲。
MVは、心臓病を抱える女の子と、聴覚障害を持つ男の子との実話からインスピレーションを得て作られていて、淡く切ない余韻に胸がきゅっとなります。
[その他のオススメ曲]
・Chuyen Rang ※ヒット曲
・Thac Mac ※ヒット曲
・Mot Dem Say ※ヒット曲
街中のユニークな場所での録音を、特色とする「M.A.D Production」に数年前から所属。
おじさんが集うコーヒースタンドや市場など、ベトナムの面白いロケーションを楽しみながら曲が聞ける動画もアップしているのでチェックしてみては。
個人的に好きなのは、静まり返った夜のサイゴンで歌う「Saigon1」と、
一寸法師のようなお椀舟に揺られながら歌う「Nghe Em」(海中でジタバタするおじさんたちにじわじわきます。)
※上のリンクから、それぞれyoutubeに飛べます。
[こぼれ話]
私が初めて Thinh suy を見たのは、EDWIN主催の「東南アジアのインディーズ」イベントだったのですが、ステージに上がってきた本人は、白靴下に短パン・Tシャツ、短髪にキャップというかなり素朴なスタイル。「え…観客の男の子上がってきちゃったよ?」と思ってしまったほど(←失礼)飾らない雰囲気が漂っていました。ただひとたび歌い出すと、その趣きのある声に、私を含むみんなが惹き付けられてしまい、あっという間に終了。人気を博しても浮かれずに、自分のスタイルを貫く姿勢は、その飾らないファッションにも表れています。
02
■ Ngot / ゴット
※個人的推し
[プロフィール]
2013年に結成した、ハノイ生まれの4人組インディーズバンドで、
現在のメンバーは、Vu Dinh Trong Thang(ボーカル、ギター)、Nguyen Chi Hung(リードギター)、Phan Viet Hoang(ベース)、Nguyen Hung Nam Anh(ドラム)。
2018年にリリースされた「Em Dao Nay」がヒットし、同年インディーズとしては初となる「Song of the Year」「New Artist of the Year」をW受賞。
カフェで歌うことから活動を始め、現在では毎回チケットが完売必至の人気バンドに。
[魅力]
一番の魅力は、1つのジャンルに留まらない多様な音楽性。
ポップやロック、民族音楽やエレクト二ックなど、さまざまなジャンルを取り入れた楽曲が特徴で、1つの曲の中にいくつもの音楽的要素が詰まっている点が魅力。
あくまでも私見ですが、、探究心と遊び心あふれる音楽は、日本でいう「くるり」のようなイメージと、勝手に思っています。
主に作詞作曲を手掛けるのは、芸術一家に生まれたボーカルのThang氏。気取らない言葉を選びつつも、芯は人生の問題について書いているものが多く、そんな独特な歌詞も魅力の1つです。
人気になった現在も、自分たちの世界観と自由を維持するためにインディーズでの活動を選択。「Ngot」はベトナム語で「Sweet」の意味です。
[オススメ曲]
「Chuyen Kenh」
90年代を思わせるレトロなMVが印象的な曲。
解釈が難しい曲といわれていますが、勝手に推測すると「人生は明暗のどちらもあるもの。ただ、TVを見ていた少年は大きくなってもTVを見て、他人の人生を辿っているだけ。孤独で退屈な日々の繰り返しをどうするか。それは自分でチャンネルを変えるしかないんだよ。」という意味かなと思っています。
「テレビを見る以外に何をしていたの(Toi da lam gi ngoai xem ti-vi)?」
「(もし孤独なら)なぜチャンネルを変えないの(〜Sao khong Chuyen Kenh di)?」という歌詞が印象的な曲です。
「Em dao nay」
別れた彼女のことを「最近どうしてるんだろう」と回想する歌。
最後の「最近君は、ホーグムのチャダー飲みにいってる?(Dao nay Em co di tra da ho guom?)」の歌詞が印象的です。
※ホーグム = ハノイ旧市街のホアンキエム湖周辺
※ チャダー = アイスティー
[その他のオススメ曲]
・Cho
推しが多い… 笑
[こぼれ話]
ロゴ入りTシャツやバッグなど、オリジナルグッズを不定期で販売しており、
ライブ情報も含めて、公式Facebook からチェック可能です。
↑ Facebookで見て購入した2ndアルバム「Ng`bthg」
03
■ Hai Sam / ハイサム
[プロフィール]
1999年生まれの現在22歳。ハノイを拠点に活動する、インディーズのシンガーソングライターで、しっとりとした大人な曲調と、叙情的な歌声が特徴。
代表曲は、「Mot Dieu Ma Anh Rat Ngai Noi Ra(2017)」や「The Thoi(2018)」。
露出は少ないが、コンスタントに楽曲を製作しており、不定期でのライブ開催や、ほかのアーティストとのコラボなど積極的に行っている。
[魅力]
ハイサムの魅力は、息多めのささやくようなロマンチック声(褒めています。)と、ありそうでないセンチメンタルな曲調。
10代で「The Thoi」を作っていることからも、年齢の割りに落ち着いた曲が多いなと感じます。薄暗い部屋で聴きたい、詩的な曲が多め。
[オススメ曲]
「The Thoi」
これまでにはなかった、流れるようなメロディーにのせた歌が印象的。
ベトナム語の声調を生かしながらこのメロディーを組み立てるのは、なかなかの計算が必要だろうなと推測しつつ、穏やかな曲調に癒やされます。
[その他のオススメ曲]
・Mot Ngay Nhu Hom Nay(× Khoa Vu)
・Ngu ←動画の1曲目
・Mong
上の「Ngu」という曲は、「Khong Can(いらない)」というタイトルで、女性歌手「Dinh Huong」が歌い、さらにバンド「The Sheep」がカバーするなどしてヒットしました。
個人的には、ハイサムの大人な「Ngu」が推しです。
[こぼれ話]
この写真は、以前ホーチミン市内で行われたライブのものなのですが、インディーズアーティストのライブは、前半にオープニングアクトとして1時間程度ほかのバンドが数組演奏することが多いので、(開演が遅れたりなどを含めると、経験上は)全体で 3〜4時間かかることが多いです。立ち見だとなかなかしんどいので、座れる席を選んだり、目当てを絞って行くといいかもしれません。
あと、余談ですが、「Hai Sam」とネット検索すると、同じ綴りのナマコ(Hải sâm)が大量発生するのでご注意を 笑
04
■ Tien Tien / ティンティン
[プロフィール]
1991年生まれ、ラムドン省バオロック出身のシンガーソングライター。
歌手のタンブイ氏が率いる音楽アカデミーで優秀な学生だったTien Tienは、2015年にリリースした「My Everything」が大ヒットし、一躍 " 時の人"に。
現在はホーチミン市を拠点に活動中で、甘く切ないポップやバラードから、リミックスまで幅広く制作。サムスンやソニー商品のアンバサダーも務めるなど、高い知名度を誇る。
もじゃっとした髪型がトレードマーク。
[魅力]
少しかすれたような、特徴的な声が魅力のTien Tien。
格好いい曲調で切なさを歌いながら、全体を通してポジティブなメッセージを届けています。
日本語の訳詞が見られるものもあるので、Youtubeの字幕をONにして聴いてみては。
[オススメ曲]
「My Everything」
Tien Tien の名が世に知られる きっかけになった曲。
それまでの V-POP にはなかった海外っぽい曲調で、出だしから一瞬「これ何語?」 と分からなくなるオシャレなメロディと歌い方が、当時は衝撃でした。(← ベトナム語がオシャレじゃないという意味ではないです念のため。)
※ MVの内容は若干「ん?」と思うところもありますが、初期のご愛嬌ということで年を追うごとにMVも洗練されていきます。
[その他のオススメ曲]
[こぼれ話]
2016年には、同じ状況にある子どもたちを守りたいと、自身が子ども時代に受けていた性的虐待を告白。被害者を支援するNPOの活動にも前向きです。
個人的には、ベトナムに来た当初。日常生活で触れる音楽といえば、バスやタクシーの車内で容赦なくかかる、運転手の「俺ベスト」的なベトナム音楽で、演歌のような節のきいた伝統音楽がほとんどだったので、「ベトナムの音楽」に興味が湧く機会がなかったのですが、そんなときにカフェで流れていたのが、Tien Tienの「My Everything」でした。こういう曲もあるんだ!とうれしくなり、そこから検索して発見。そのつながりで 2組目の「Ngot」も知り、ベトナムのインディーズ系音楽にハマるきっかけになりました。
05
■ Quyech / クエック
[プロフィール]
2017年に作詞作曲を手掛ける「Duc Nguyen(ギター)」が、クエックを始動。
その後、「Linh(ボーカル)」と、今回2組目で登場した「Ngot(ゴット)」の Thang が加入し、ファーストシングル「Doc Thoai」でデビュー。異彩を放つ、独創的な曲が話題となる。2020年に Thang が脱退。
その後、アルバム「Quyen Troi」をリリース。
2021年4月に Linh が脱退を発表。今後は、残るメンバーとなる Duc が、さまざまなボーカリストと協力していく意向を示している。
※アルバムのリマスター版が、2021年6月25日から Zing MP3、Spotify で公開され、現在視聴可能。
[魅力]
まるで別世界に迷い込んだような、ファンタジーかつ摩訶不思議な楽曲が魅力。
たとえば、揺れるカギ束や、氷が水に落ちる音など、曲によって異なる効果音や楽器を組み合わせて作る曲は、一貫して独創性に富んだ「クエック」ワールドがあり、異国の民族音楽にも通じるよう。
「Hoa 」「Ky Ten」などは、高原とか砂漠が出てくる映画のサントラのような壮大な世界を感じさせます。
[オススメ曲]
「Doc Thoai」
斬新で複雑な音の組み合わせは、まさに "独創的"。
オリジナリティ光る、インパクト大のデビュー曲です。
「Doc Thoai」は、ベトナム語で「モノローグ」の意味。
[その他のオススメ曲]
・Cho
ここから下は、 Zing MP3 や Apple music などで聴くことができます。
・Hoa
[こぼれ話]
シングル曲「Chi Duong」以降は、1984年設立の日本のレコード会社「MIDI INC.(ミディ)」が制作をサポート。ミディは、これまでに「坂本龍一」「大貫妙子」「サニーデイサービス」「ゆらゆら帝国」など多くの、そして錚々たるアーティストを手がけたレコード会社です。
参考:midizine(ミディのnote.)
06
■ Bung Mo / ブンモー
[プロフィール]
ホーチミン市を拠点に活動する、双子ボーカル( Tu & Thu )、双子ギター( Tuan & Thanh )のWツインズ、インディーズユニット。
かわいい女子2人と、素朴系男子2人というところに不思議と好感度が上がってしまう彼らのバンド名は「Bung Mo(ぽっこりお腹)」。
デザイナーなど各々の活動も併行しながら、曲を制作し、主にホーチミン市内でライブ活動を行っている。ボーカルの Tu はソロでも活動中。← 詳しくは下の[こぼれ話]で。
[魅力]
Bung Moの秀でた特徴といえば、双子ボーカルのきれいな澄んだ声。
たとえば、観客が息を凝らして待つ、演奏前の静かな空間で、そっとツインズが歌いだすと、「空気清浄機つけました?」ってくらいに空気が澄んで感じてしまう、きれいさ。
郷愁に駆られるような、ノスタルジックな歌詞とメロディも魅力です。
[オススメ曲]
「The One」
[その他のオススメ曲]
・a oi tieng hat con tang me cha
・Phan
・rong
[こぼれ話]
双子のボーカルの1人、Tu(トゥー)さんは、デザイナーとして活動するかたわら「thetumeymtu(もしくは tu tu)」名義でソロ音楽活動もしています。人気ラッパー「HIEUTHUHAI」とコラボした曲 ↓「OISHI」など、魅力的な曲が多いので一聴の価値ありと思います。
↓ ↓ ソロでのオススメ曲は こちら
※ 音楽共有サービス「SoundCloud」のページに飛びます。
以上で前半は終わりです。
続きとなる後半は、こちら ↓
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