現在、新型コロナの第4波がきている、ベトナム・ホーチミン市。
2021.5月末から社会隔離措置がとられ、飲食店の店内飲食が禁止になっているため、しばらくは、ショップの紹介やベトナムに関するコラムを書くことにしました。
コラムの名前は、「ベトナムに関する話」…略して「ベトバナ〜」ということで、サイコロおじさんにあやかった、ひねりのない名前になりました。コラムの第1回目となる今回は、「Rua Di(洗ってー)」について、です。
はじまりはじまりー。
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以前、日本にきてびっくりしたエピソードとして、
"花見" について話している外国人の方がいました。
「日本人は”花見”といって、桜の咲いているところに行くけど、実際に花を見ている人はほとんどいなくて、ただ宴会してるだけ。これのどこが "花見" なの?」と…笑
昼間にピクニックがてらというケースもありますが、
たしかに、「飲むための口実」になっている面もあると思います。
この "飲む口実" として使える言葉が、
"飲みニケーション" が盛んなベトナムにも、あります。
それが、今回の「Rua Di/ルアディー」という言葉。
「Rua」は「洗う」の意味、
「Di」は、文末に付けることで「命令形」になる言葉。
なので、
「Rua Di」=「洗って」となります。
※ 北部読みだと「ズア・ディー」、南部読みだと「ルア・ディー」です。
※ 命令形ではありますが、言葉自体が日本でいう「洗え!」のような強い表現ではなく、
やさしく言えば「洗って♡」、強く言えば「洗え!」と、言い方によって変わるそうです。
では、どんなときにこの「洗って」を使うかというと、
それは、新しいものを買ったとき。
スマホやバイク、家や車など、新しいものを買ったときに、ベトナム人から「Rua Di〜!(洗って〜!)」と声をかけられた経験のある方も、いるのではと思います。
たとえば、スマホを買ったときに、
もし、これを真に受けて実際に「洗って」しまうと、
買ったばかりのスマホを、自分で水没させて終了。
「洗って」といった側のベトナム人も「え…本当に洗ってる…」と引いてしまう、
悲しい事態が待っているので、、ご注意を。
では、この「洗って」に隠れている本当の意味はというと
、、、「おごって」。
© Jack Clayton
新しいものを買ったときに、買った人が周囲の人に対しておごるという習慣があり、誰かが何かを買ったと聞きつけると「おごって〜」「飲み会しようよ〜」の意味で「Rua Di〜」と声をかける場面は、SNS上でも時折目にします。
ベトナムスケッチで以前、書かれていた記事によると、
なぜ「洗う(Rua)」という言葉なのか由来は不明。でも「恋人を洗う(Rua nguoi yeu)」や「(合格)証書を洗う(Rua bang)」など、あらゆる出来事が対象となる一般的な表現とのこと。
※ ベトナムスケッチの記事は→ こちら
口実になればなんでもあり…と思われる、あの手この手感が漂いますが、喜びをみんなでシェアし、何かにつけて楽しんでしまおうという文化からは、ある種のコミュニケーション能力の高さを感じます。
と、
少々先輩面して書きながら、私もこの「洗ってー」の意味を見事に勘違いした1人。笑
最後にその勘違い話を、少し書かせていただきます。
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私がベトナムに来た2014年頃は、まだ配車アプリも一般的ではなく、移動手段といえば、タクシーか、路線バスか、セオム(交渉制バイクタクシー)の3択。
もっと自由に動き回りたい! でも50ccの原付はあまり売ってないし、それ以上大きなバイクに乗る自信もない、ということで買ったのが「電気バイク」。
ベトナム語学校への通学や買い物などに使っていました。
「電気バイク」とはいっても、
ベトナム語にすると「電気自転車(Xe Dap Dien)」と、あくまでも扱いは「自転車」。
ナンバープレートも免許も不要ということで、ベトナムでは学生が乗っているケースが多いかもしれません。
買ったのは、ヴォーティーサウ(Vo Thi Sau)にあるお店。
購入後は、ドキドキしながらアパートまで運転し、駐輪場に駐車しました。
すると、入口にいたチャラけた少年から
「子どもが乗る自転車になんで大人が乗ってんの 笑」と、小馬鹿にされ、早々にしょんぼり。
その後、日本人の方からネガティブな反応が続いたこともあり 笑
極弱メンタルの私は、
「自分なりに適応しようとしてるだけなのにな、、うう。」
と、ヘドロのように意気消沈。
そんなとき、
夫の会社に用事があり、愛車で向かうことにしました。
「埃っぽい駐輪場に置いておくとすぐ汚れちゃうけど、電気バイクだから洗車できないしなあ、まあいっか。」と、汚れが気になりつつ外出。
会社につくと、電気バイクを見たベトナム人スタッフが「え!買ったの?新車?見せて見せてー」と、嬉々としていってくれて、ちょっとほっこり。
「乗ってもいい ?」とまたがって、別のスタッフに写真を撮ってもらい、すぐさまFacebookにアップ。と、これまたベトナム人の代表のような振る舞いで、
ひとしきり撮り終わると、鼻歌を歌いながらデスクに帰っていきました。
とりあえず、何かしら喜んでもらえたみたいでよかった。
と、思いながら帰宅して夜になり、その子の投稿を見ると、
コメント欄にあふれる「Rua Di(洗って)」の言葉。。。
当時、完全にひねくれていたことと、汚れが気になっていたこと、
そして、「Rua Di = 洗って」の意味しか知らなかったことが重なって、
「洗えよ、汚ねえなあ」「そうだ洗えよー」の大合唱と勘違い。
あんなに楽しそうな反応を見せてくれていたスタッフもみんな「結局、電気バイクを馬鹿にしてんでしょ。」と被害妄想が暴走。
そのベトナム人スタッフともあまり話さなくなってしまいました。(根に持つ 笑)
その後しばらくして、ベトナムスケッチのコラムで本当の意味を知って、びっくり。
なんだー。あのときはただ「おごって、おごって〜」とワイワイ盛り上がっていただけだったのか…と知って、勘違いで話しかけなくなってしまったことを反省。
久しぶりにその子に会ったときに「私こういう勘違いをしてて」と話したら、「そうなの? でも汚なくなかったじゃん。あ、そういえばね〜」と、全然違う話題に。
結局、気にしてたのは自分だけだったのかも。
と、ベトナム人の言う「ベトナム人は気にしません」を見習おうと思った瞬間でした。
ということで、飲み会の口実にも使える「Rua Di(洗って)」の言葉。
ベトナム人の知り合いなど、周りで新しいものを買った人がいたら、「Rua Di〜!」と声をかけてみると、楽しいコミュニケーションが生まれるかもしれません。
※コロナ禍のいまは、「コロナが落ち着いたら」の約束に使えますね。
(おわり)
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この記事に掲載している版画は、
ホーチミン市を拠点に活動する「Jack Clayton」さんというロンドン出身のアーティストによる作品です。 今回の「Rua Di」という言葉をモチーフにした作品のほか、ベトナムをモチーフにした手彫り+ハンドプリントの作品を多数製作しているので、興味のある方は →HP を覗いてみては。
ホーチミン市内のセレクトショップ「OHQUAO」や「Vesta Lifestyle & gifts」などでも販売しています。
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